9月2日、文化人類学者にしてアナーキスト社会運動家デヴィッド・グレーバー氏(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授)が亡くなったとのことです。社会運動の理論と実践への多大な貢献があった人物であり、まだ59歳の早い死が惜しまれます。なお、死因は公表されていません。
グレーバーは『アナーキスト人類学のための断章』、『官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則』、『民主主義の非西洋起源について』、『負債論 貨幣と暴力の5000年』、そして邦訳が出版されたばかりで話題をさらっている『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』など多数の著作で知られています。
グレーバーは、ニューヨークのユダヤ系家族のもとに生まれました。母ルース・ルービンシュタインは国際婦人服裁縫労働者同盟の活動家であり、その機関紙から生まれたミュージカル『ピンと針』の上演に主導的な役割を果たすなど、芸術的な才能を発揮しました。父ケネス・グレーバーは青年共産主義連盟のメンバーであり、スペイン内戦の国際義勇軍の一因でした。帰国後は印刷工場で働いていました。
ニューヨーク州立大学を卒業したグレーバーはシカゴ大学に進み、著名な人類学社であるマーシャル・サーリンズのもとで博士号を取得します。その後、イェール大学の助教授に就任しますが、テニュア審査期間が残っているにもかかわらず、大学は契約の更新を拒否します。これは政治的に動機づけられた決定だとして、サーリンズを含めた著名な人類学者などの同僚、学生や活動家など4500人が決定を撤回するように求める署名に参加しました。
結局、イェールが1年分の研究休暇を保障することを条件に、グレーバーはイェールを離職、英国に渡りロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに職を得ます。その後、一時ロンドン大学で教えた後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで教鞭を取りました。
その著作以上にグレーバーを有名にしているのは、様々な社会運動、特に「オキュパイ・ウォールストリート」運動への貢献です。
オキュパイ運動のキャッチフレーズは「We are 99 percent (我々は99パーセントだ)」というものです。
これはもちろん、新自由主義の元で、上位1パーセントの富裕層だけが年収や資産を増大させ、残りの99パーセントの所得は減少の一途を辿っているということを参照しています。そして、99パーセントの人たちの暮らしが豊かになるような経済システムを求める運動の必要を訴えているわけです。
ガーディアン誌によれば、グレーバーが「99パーセント」というフレーズを思いつき、ギリシャ人と、スペインのインディグナドス運動に関与していた活動家の二人が we を付け加え、後日「兵器ではなく食物を」運動に関わっていた退役軍人が are を加えることで完成した、とのことです。
2012年に開催した「おおさか社会フォーラム」でも"We are 99%" はキャッチフレーズの一つとして使われました。その時に、デザイナーのいのうえしんぢ氏に作成していただいたロゴを、ご好意で使わせていただけることになりましたので、SNS用のプロフィール画像として公開します。
以下にありますロゴは、ダウンロードして、Twitterなどでご自由にご利用ください。