2020年9月6日日曜日

#デヴィッド・グレーバー追悼 #We_Are_99% ロゴ画像ご提供

 9月2日、文化人類学者にしてアナーキスト社会運動家デヴィッド・グレーバー氏(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授)が亡くなったとのことです。社会運動の理論と実践への多大な貢献があった人物であり、まだ59歳の早い死が惜しまれます。なお、死因は公表されていません。





 グレーバーは『アナーキスト人類学のための断章』、『官僚制のユートピア テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則』、『民主主義の非西洋起源について』、『負債論 貨幣と暴力の5000年』、そして邦訳が出版されたばかりで話題をさらっている『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』など多数の著作で知られています。

 グレーバーは、ニューヨークのユダヤ系家族のもとに生まれました。母ルース・ルービンシュタインは国際婦人服裁縫労働者同盟の活動家であり、その機関紙から生まれたミュージカル『ピンと針』の上演に主導的な役割を果たすなど、芸術的な才能を発揮しました。父ケネス・グレーバーは青年共産主義連盟のメンバーであり、スペイン内戦の国際義勇軍の一因でした。帰国後は印刷工場で働いていました。

 ニューヨーク州立大学を卒業したグレーバーはシカゴ大学に進み、著名な人類学社であるマーシャル・サーリンズのもとで博士号を取得します。その後、イェール大学の助教授に就任しますが、テニュア審査期間が残っているにもかかわらず、大学は契約の更新を拒否します。これは政治的に動機づけられた決定だとして、サーリンズを含めた著名な人類学者などの同僚、学生や活動家など4500人が決定を撤回するように求める署名に参加しました。

 結局、イェールが1年分の研究休暇を保障することを条件に、グレーバーはイェールを離職、英国に渡りロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに職を得ます。その後、一時ロンドン大学で教えた後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで教鞭を取りました。


 その著作以上にグレーバーを有名にしているのは、様々な社会運動、特に「オキュパイ・ウォールストリート」運動への貢献です。

 オキュパイ運動のキャッチフレーズは「We are 99 percent (我々は99パーセントだ)」というものです。

 これはもちろん、新自由主義の元で、上位1パーセントの富裕層だけが年収や資産を増大させ、残りの99パーセントの所得は減少の一途を辿っているということを参照しています。そして、99パーセントの人たちの暮らしが豊かになるような経済システムを求める運動の必要を訴えているわけです。


 ガーディアン誌によれば、グレーバーが「99パーセント」というフレーズを思いつき、ギリシャ人と、スペインのインディグナドス運動に関与していた活動家の二人が we を付け加え、後日「兵器ではなく食物を」運動に関わっていた退役軍人が are を加えることで完成した、とのことです。


 2012年に開催した「おおさか社会フォーラム」でも"We are 99%" はキャッチフレーズの一つとして使われました。その時に、デザイナーのいのうえしんぢ氏に作成していただいたロゴを、ご好意で使わせていただけることになりましたので、SNS用のプロフィール画像として公開します。

 以下にありますロゴは、ダウンロードして、Twitterなどでご自由にご利用ください。











2015年7月15日水曜日

【お知らせ】7・31緊急学習会 ギリシャの人々は何を選択したのか?

7・31緊急学習会
ギリシャの人々は何を選択したのか?


報告「ギリシャ危機の背景――政府の放漫財政か、それとも欧州統合の構造的問題か?」

講師:菊池恵介さん(同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科准教授、社会思想史)

日程:7月31日(金) 午後6時半

場所: エルおおさか7階709 (京阪/地下鉄谷町線・天満橋下車徒歩5分)

参加協力費 500円

 EU・欧州中央銀行・IMF(トロイカ)の独裁支配にOXI(NO)!
 5年にわたるトロイカ主導の緊縮政策は失敗 - ピケティ、スティグリッツをはじめ世界の経済学者もトロイカを厳しく批判
 #ThisIsACoup これはクーデターだ!
 ギリシャ政府に緊縮政策を強要し、債務の再交渉を拒否するドイツ・メルケル首相に非難殺到。
 一方、チプラス政権の妥協をめぐっても激しい議論 ? EUの変革へ、若きリーダーたちの模索が続く。
 債務か民主主義か?
 ギリシャの「債務問題」は国際的な金融機関に仕組まれたもの。資金はドイツやフランスの銀行に還流し、ギリシャの人々や経済には役立っていない。新政権の下で、債務の監査が始まっている。

主催:おおさか社会フォーラム実行委員会

連絡先:WSFおおさか連絡会 06-6966-9003/アタック関西グループ 06-6474-1167(喜多幡)

2015年6月1日月曜日

世界社会フォーラム2015(3月24-28日 チュニジア・チュニス)報告会

日時: 6月12日(金) 午後6時半〜
場所: エルおおさか5階研修室2 (京阪/地下鉄谷町線・天満橋下車徒歩5分)
■報告
☆「中東・アフリカの変革の先頭に立つ女性たち」秋本陽子さん(ATTAC Japan)
☆「南から北へ〜拡大する“債務帳消し”の声」菊池恵介さん(同志社大学教員)

■現地の映像、インタビューなど
(参加協力費 1000円)

2014年4月13日日曜日

バングラデシュ:工場倒壊、衣料労働者1200余人の犠牲から1年 グローバル搾取の実態を考える おおさか社会フォーラム2012・フォローアップ企画

※時間のご案内で、午後1ー4時となっていましたが、 2時から4時の間違いです。
 お詫びとともに訂正させていただきます。
 よろしくお願いいたします。
バングラデシュ:工場倒壊、衣料労働者1200余人の犠牲から1年
グローバル搾取の実態を考える

おおさか社会フォーラム2012・フォローアップ企画


日時 4月27日(日) 午後2-4時
場所 山西福祉記念会館(YWCA)3階小会議室(部屋番号は当日会場にてご確認ください)
(大阪駅から徒歩10-15分、http://www.yamanishi-fk.jp/access/index.html)

プログラム
■ドキュメンタリー・ビデオ上映
■お話  小吹岳志さん(フェアトレード・サマサマ、オイコクレジット・ジャパン)
■自由討論 ⇒午後4時ごろから、大阪駅周辺での宣伝活動を予定しています。 

主催 おおさか社会フォーラム実行委員会
http://osaka.socialforum.jp/

ナズマ・アクテルさん(統一衣料労働者連盟委員長)からのメッセージ
2014年4月12日付

兄弟姉妹の皆さん

統一衣料労働者連盟 (SGSF)から連帯の挨拶を送ります。

SGSFは2003年以来、既製服(RMG)産業において、この部門で働く労働者の意識を高め、権利と責任についての知識を増進するために活動しています。ラナ・プラザの出来事の後、労働者たちは怖がっており、自分たちの生命について不安を感じています。被害者たちはまだ十分な補償を受け取っていません。私たちは日本の多くの企業がバングラデシュから製品を輸入していることを知っています。それらの企業がラナ・プラザ・トラスト基金に正当な補償金を支払い、工場倒壊の被害者たちが適切な補償を受けられるようにすることが重要です。
バングラデシュでは労働法に関連していまだに多くの問題があります。労働組合が自由に活動でき、弾圧や不当解雇を受けないように、日本政府が働きかけることも重要です。 

SGSFはラナ・プラザの負傷した労働者たちを支援する活動を続け、健康診断、治療、継続的な療法やモニタリングを提供しています。SGSFはまた、政府やブランド、バイヤー、販売店に対して、適切な補償を行うよう働きかけています。

私たちは統一した行動を必要としており、すべての人々が団結することを必要としています。もう一つの世界が可能であることを望んでいます。
日本は友好的な国として、常に私たちと共にあります。私たちは日本の人々が、バングラデシュの衣料産業で働く労働者の意識を高め、知識を増進するための活動を支援してくださることを心から期待しています。

連帯を!

 昨年4月24日朝、ダッカ近郊のサバール(シャバール)で、8階建ての商業ビル、ラナ・プラザが倒壊し、このビルに入居していた3つの衣料工場の労働者3000人が生き埋めになりました。そのうち1192人の遺体が発見され、いまだに百数十人が行方不明となっています。

このビルは4階建てのビルを違法に増築しており、前日に壁に亀裂が発見されたため使用中止命令が出され、銀行や店舗は休業していたにもかかわらず、工場経営者たちは、怖がっている労働者たちを脅して、無理やり就労させました。ビルが倒壊したのはその数十分後でした。

この事故は、バングラデシュから安い衣料品を輸入している各国の消費者や企業に大きな衝撃を与えました。労働組合や市民団体を中心に、企業や経営団体への働きかけが続けられ、国際的ブランドや小売企業が費用を拠出する工場安全協定や、被害者・犠牲者家族への補償基金の設立、バングラデシュ政府による最低賃金の引き上げ、労働組合の活動の自由化に向けた動きなど、変化が始まっています。

「・・・今では消費者は供給チェーンの問題にこれまでよりも大きな関心を持つようになり、キャンペーン団体は中心的な役割を果たしており、ソーシャル・メディアはこの問題にこれまでなかったほどスポットライトを当てている」(「バングラデシュの工場倒壊以降の10の変化」、英国『ガーディアン』紙4月2日付)

グローバリゼーションの中での格差拡大、労働者の権利の破壊の最底辺として位置づけられてきたバングラデシュの衣料産業で変化が始まり、「先進国」でも反省と変化の大きな動きが始まっています。

1911年の米国におけるトライアングル社(衣料工場)の火災では146人の労働者が犠牲になり(その多くは移住労働者)、その後の同国における労働条件改善と組合運動の強化の大きな転機となりました。1970年の韓国・ソウルの平和市場でのチョンテイルさん(衣料労働者)の焼身の訴えは、その後の同国における民主的労働運動の発展のきっかけとなりました。今、バングラデシュの衣料産業において始まっている変化は、安い労働力を求めて、労働者の安全や権利を犠牲にして、底辺への競争に邁進してきた新自由主義的グローバル化の流れを変える大きな契機になるかも知れません。そうなるかどうかは、私たち一人一人の関心と連帯にかかっています。

私たちは、2012年9月に開催したおおさか社会フォーラムに、バングラデシュの衣料産業の労働組合のリーダーを迎え、交流したことをきっかけとして、バングラデシュの労働者の人権と労働者の権利のために闘っている人たちとの継続的な連帯を模索してきました。

ラナ・プラザ倒壊の1周年にあたる4月24日に向けて、世界的にアクション・デーが呼びかけられており、日本でもそれに呼応するため、下記の集会と行動を計画しました。ぜひご参加ください。

日時 4月27日(日) 午後2-4時
場所 山西福祉記念会館(YWCA)3階小会議室(部屋番号は当日会場にてご確認ください)
(大阪駅から徒歩10-15分、http://www.yamanishi-fk.jp/access/index.html)

プログラム
■ドキュメンタリー・ビデオ上映
■お話
小吹岳志さん(フェアトレード・サマサマ、オイコクレジット・ジャパン)
■自由討論
⇒午後3時ごろから、大阪駅周辺での宣伝活動を予定しています。 

主催 おおさか社会フォーラム実行委員会
http://osaka.socialforum.jp/

2013年12月4日水曜日

アメリカ最新事情 : 市民蜂起のウィスコンシンとスクール・ウォーズのシカゴ (2013・7・30-8・4交流ツアー報告)

アメリカ最新事情
市民蜂起のウィスコンシンとスクール・ウォーズのシカゴ
(2013・7・30-8・4交流ツアー報告)

日時:12月13日(金)午後6時半
場所:エルおおさか 501(京阪/地下鉄谷町線・天満橋下車徒歩5分)

 おおさか社会フォーラム実行委員会で米国ウィスコンシン州の2011年2-3月の闘いの記録「市民蜂起」(かもがわ出版)を翻訳出版したことをきっかけに、闘いの現場を訪れ、活動家たちと交流するツアーを計画し、13人が参加しました。

 州都マディソンにある州議事堂では、今でも毎日、昼休みにプロテストソングの集会がつづいており、警察との緊張が高まっていました。公務員の団交権はく奪の悪法が強行されましたが、違憲判決が相次ぎ、闘いは続いています。昨年の選挙で初当選した市民派議員もがんばっています。

 隣のイリノイ州のシカゴは、公立学校閉鎖をめぐる地域ぐるみの闘い(スクール・ウォーズ)の渦中。教員労組はフレッシュなリーダーの下で、昨年9月に8日間のストライキを闘い抜きました。

 ウィスコンシンとシカゴの労働者・市民の闘いは、大阪での橋下・維新との闘いにも勇気と知恵を与えてくれます。報告会にご参加を。

入場カンパ500円

主催:おおさか社会フォーラム実行委員会
連絡先:WSFおおさか連絡会 090-3274-1667(梅田)/
アタック関西グループ 06-6474-1167(喜多幡)

2013年5月25日土曜日

【お知らせ】バングラデシュ衣料品工場ビル倒壊に関するアピールを行います

 バングラデシュの首都ダッカにおける、4月24日のラナ・プラザ・ビル倒壊事故から1か月になりました。



 衣料・ファッション産業のコスト削減競争の犠牲になった1127人の方たちを追悼し、一瞬にして閉ざされてしまった1127人の夢と希望に想いを寄せ、遺族や友人たちへの支援を訴えるために、あす、大阪駅前で宣伝活動を行います。
 あす(5月26日)午後2-3時ごろに、時間のある方、大阪駅付近に出かける予定のある方、ぜひご協力をお願いします。

時間:午後2-3時
場所:JR大阪駅 御堂筋南口 を出た歩道橋下あたりに集合。


 写真とメッセージのパネルを持ち、チラシを配布しながら、リレートークをします。
 終了後、1時間ほど、交流とこれからの計画についての話し合いを予定しています。
 この宣伝活動の様子を写真で、バングラデシュの仲間に届けます。写真に写りたくない方は、その旨お申し出ください。

バングラデシュにおける火災と建造物の安全に関する協定【仮訳】

 バングラデシュの首都ダッカの郊外で4月に起きたラナ・プラザ・ビル倒壊事故では死者の数が1127人と報告されるなど、歴史的に見ても極めて大きな部類に属する産業事故といえます。
 先に「バングラデシュ衣料品工場ビル倒壊に関する、統一衣料労働者連盟委員長ナズマ・アクテルさんからのメッセージ」をご報告しました。

 この問題に関して、ファイナンシャル・タイムズの「バングラの労働環境改善の対応で欧米に温度差 」という記事でも紹介された、バングラデシュにおける火災と建造物の安全に関する協定(Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh)の日本語訳を作成しましたのでご紹介します。
 これは、インダストリオールとUNIが市民団体と協力して起草したものです(インダストリオールは製造業、UNIはサービスおよび小売業の国際産別組合で日本でも連合系の民間の組合はほとんど、このどちらか、または両方に加盟しているはずです)。
  日本でも Change.org を使った「バングラデシュ安全協定への調印と確実な実行を求めます」という署名活動が呼びかけられています。



バングラデシュにおける火災と建造物の安全に関する協定
 (訳:おおさか社会フォーラム実行委員会)

ここに署名する者は、バングラデシュの既製服(以下、「RMG」と言う)産業において、労働者が合理的な安全衛生対策によって防止できる火災、建造物の崩壊、または他の事故を恐れなくてもよい安全かつ持続可能な産業を目指すことを確約する。

本協定に署名する者は、バングラデシュにおける5年間にわたる火災および建造物の安全に関するプログラムを確立することに同意する。

このプログラムは、火災防止に関する国家行動計画(以下、「NAP」と言う)の上に確立されるものであり、それは上記のほかにバングラデシュの火災防止の向上に有意義な貢献を成すいかなるステークホルダー(利害関係者)によるいかなる活動の計画および実施をも積極的に歓迎する。署名者は、このプログラムおよびその活動をNAPと連携させ、たとえば共通のプログラム、調整および諮問機構の確立を通じた協力を含めて、緊密な連携を確保することを確約する。

署名者はまた、NAPおよび本協定の署名者が想定するプログラムの両方が実行されることを保証するために、国際労働機関(ILO)のバングラデシュ事務所を通じた、またその国際的プログラムを通じた強力な役割を歓迎する。

署名者は、本協定に署名してから45日以内に実施計画を策定し、合意するものとする。「火災と建造物の安全に関する共同覚書」(2012年3月15日付)に署名し、このプログラムの実施を支援する意向を表明している非政府組織は、自らの選択により、本協定に証人として署名するものとする。

本協定は、その署名者に対して、NAPで規定する実践的活動を考慮した、少なくとも以下の要素を含むプログラムの資金を提供し、実施する責任を負わせる:

範囲:本協定は、締約企業のための製品を生産しているすべてのサプライヤー(供給元)を対象とする。署名者は、それらのサプライヤーを下記のカテゴリーに区分し、その区分に従ってそれらの工場に対する下記の検査を受け入れ、改善措置を実施するものとする。

1 各締約企業のバングラデシュにおける年間生産量の(合計で)約30%以上を生産している工場(以下、「第1層の工場」と言う)における検査、改善、および安全のための研修。

2 各締約企業の上記以外の主要な、または長年にわたるサプライヤー(以下、「第2層の工場」と言う)における検査および改善。第1層と第2層の工場における生産の合計は、各締約企業のバングラデシュにおける年間生産量の約65%以上であるものとする。

3 各締約企業の非定期的または一度限りの注文を受ける、またはその企業のバングラデシュにおける年間生産量の10%未満を生産する工場(以下、「第3層の工場」と言う)における、高いリスクの有無を確認するための、初期における限定的な検査。本項におけるいかなる規定も、各締約企業が「第3層の工場」として区分した工場の生産量がその企業のバングラデシュにおける年間生産量の(合計で)約35%を超えないことを保証する義務を軽減するものではない。「第3層の工場」として区分された工場が初期における検査の結果高いリスクがあることが確認された場合、その工場は「第2層の工場」と同じ扱いの対象となるものとする。

ガバナンス(管理):

4 署名者は、署名者である労働組合と署名者である企業が選出する同数の代表(最大で各3名)および国際労働機関(ILO)が中立の議長として選任する1名の代表によって構成される運営委員会(以下、「SC」と言う)を任命する。SCは安全検査官および研修コーディネーターの選任、契約、報酬、および活動実績の検討、プログラム予算の監督と承認、財務報告の監督と監査役の任用、およびその他の必要とされる管理的業務に責任を負うものとする。SCは全会一致による決定に到達するために努力するものとするが、全会一致に至らない場合は、決定は多数決によってなされる。SCの活動を計画するために、管理規則を策定する。

5 紛争の解決。本協定の当事者間の、本協定に関わって発生するすべての紛争ははじめにSCに提起され、SCによって決裁されるものとし、SCはいずれかの当事者によって申立書が提出されてから最大21日以内にSCの多数決によって紛争を決裁するものとする。いずれかの当事者の要求があれば、SCの決定は最終的かつ拘束力のある仲裁プロセスに上訴することができる。すべての仲裁裁定は、決定の執行が求められる側の当事者の所在地の法廷において実施されるものとし、該当する場合は「外国における仲裁裁定の承認および執行に関する条約」(ニューヨーク条約)に従うものとする。拘束力のある仲裁のプロセスは、仲裁に関連する費用の配分および仲裁人選定のプロセスを含めて(但しそれに限定されない)、UNCITRAL 国際商事仲裁モデル法1985(および2006年に採択された修正)によって管轄されるものとする。

6 署名者は、ブランドおよび小売業者、サプライヤー、政府機関、労働組合、NGOが関与する諮問委員会を任命するものとする。諮問委員会は、すべての国内および国際的なステークホルダーが相互に建設的な対話を行い、SCに対してフィードバックやインプットを提供することによって本協定の質、効果、信頼性、相乗効果の向上に関与できることを保証する。SCはNAPの当事者と協議して、共通の諮問体制の実現可能性について判断する。

7 プログラムの運営および管理は、SCによって、運用レベルにおける相乗効果を最大限に高めるために、火災防止に関する国家行動計画の実施および監督のために設立された「ハイレベル三者委員会」、およびバングラデシュ労働雇用省(MoLE)、ILO、ドイツ国際協力公社(GIZ)との協議を通じて計画し、SCは運用上の調整および支援のためGIZのオフィスを使用することができる。

信頼できる検査:

8 火災および建造物の安全に関する専門知識と完全な資質を有し、独立的な立場にあり、現在、企業、労働組合または工場によって雇用されていない有資格の安全検査官がSCによって任命されるものとする。主検査官が本協定の条項の下での委託に沿って行動している限りにおいて、また、主検査官の側の違反行為または不適格性の明確な証拠がない限り、SCは主検査官が本協約に規定する義務を、自身が適切とみなす方法で - 検査のスケジュールの設定や報告書の公表を含めて - 遂行するのを制限したり、他の方法でその遂行を妨げないものとする。

9 第1層、第2層および第3層の工場の徹底的かつ信頼性の高い安全点検は、安全検査官によって選任され、その指示の下で行動する熟練の者によって、国際的に承認された職場安全基準および(または)(2013年6月にNAPの下で想定されている検討が完了した後は)国内基準に基づいて実施されるものとする。安全検査官は、本協定の対象となる各工場の初期検査が、本協定の期間の最初の2年以内に実施されることを保証するためにあらゆる合理的な努力を行うものとする。安全検査官は、NAPの議会における検討に対するインプットを提供し、NAPの下で想定されているMoLEによる検査に関連する能力蓄積の作業を支援することができる。

10 締約企業の検査プログラムが、安全検査官の意見において、安全検査官によって定義される徹底的かつ信頼性の高い点検の基準に適合するまたはそれを超えている場合、そのような検査プログラムは本協定に定めるプログラムの活動の一部を成すとみなされる。自社の検査プログラムがそのようにみなされることを希望する締約企業は、安全検査官に対して検査結果への完全なアクセスを提供するものとし、安全検査官はそれらを報告と改善の活動に組み込む。この規定にもかかわらず、本協定の対象となるすべての工場は、依然として本協定のすべての条項に従うものとし、それは安全検査官の指示の下に行動する者が少なくとも1回、安全点検を実施することを含むが、但しそれに限定されない。

11 プログラムの下で検査が実施されたすべての工場に関する書面による検査報告書は、安全検査官によって検査の日から2週間以内に作成され、完成時点で工場管理者、工場の安全衛生委員会、労働者代表(1つ以上の労働組合が存在する場合)、締約企業およびSCに共有されるものとする。安全検査官の意見において、工場に機能している安全衛生委員会が存在しないとみなされる場合には、報告書は本協定に署名している労働組合に共有される。安全検査官は、SCによって承認された期限内、但し6週間を超えない期間内に、検査報告書を、工場の改善計画(もしあれば)と合わせて公開するものとする。安全検査官の意見において、検査の結果、労働者の安全に重大かつ切迫した危険が認められた場合、安全検査官は直ちに工場管理者、工場の安全衛生委員会、労働者代表(1つ以上の労働組合が存在する場合)運営委員会、本協定に署名している労働組合に通知し、改善計画を指示するものとする。

改善:

12 安全検査官によって、工場が建築、防火および電気安全の基準に適合するために必要とされる改善措置が指示された場合、その工場を第1層、第2層および第3層のサプライヤーとして区分している締約企業(1つまたは複数)は、その工場に対してそれらの改善措置を、義務的かつ期限付きのスケジュールに従って実施するよう要求するものとし、すべての大規模な改修に対しては十分な期間を割り当てるものとする。

13 締約企業は、このプログラムの下での検査対象となるサプライヤーに対して、工場(または工場の一部)がそのような改善措置を完了するために必要な改修のために閉鎖される期間、但し6カ月を超えない期間の間、労働者の雇用関係と定期的収入が維持されることを要求しなければならない。そうしない場合は、第21項の規定に従って注意、警告および最終的には取引関係の打ち切りが行われる可能性がある。

14 締約企業は、工場が受注を失った結果として雇用が打ち切られた労働者に、安全なサプライヤーにおける雇用が提供されるように合理的な努力を行うものとし、必要に応じて、積極的に他のサプライヤーと協力して、これらの労働者が優先的に雇用されるようにする。

15 締約企業は、サプライヤーの工場に対して、労働者が合理的な理由をもって安全でないと考える作業を拒否し、そのことによって差別や賃金の損失を被らない権利を尊重するよう要求するものとし、それには労働者がその作業のために安全ではないと合理的な理由をもって考える建造物に入るまたはその中にとどまることを拒否する権利を含むものとする。

研修:

16 SCによって任命された研修コーディネーターは、防火および建造物の安全に関する広範な教育プログラムを確立するものとする。労働者、管理者、安全要員に対する研修プログラムは、第1層の工場の研修コーディネーターによって選任された熟練の者によって、労働組合や地元の専門家の関与をもって提供されるものとする。これらの研修プログラムにおいては、基本的な安全手順と注意事項を扱うだけでなく、労働者が自分の安全を確保するために懸念を表明し、積極的に活動に参加することを可能にするものとする。締約企業はそのサプライヤーに対して、研修コーディネーターが指名し、安全研修の専門家および資格のある労働組合代表を含む研修チームに、定期的に労働者と経営者への安全研修を実施するために工場への立ち入りを認めるよう要求するものとする。

17 締約企業は、バングラデシュにおいてその締約企業に製品を供給しているすべての工場に対して、バングラデシュの法律に従って機能し、当該工場の労働者と管理者によって構成される安全衛生委員会の設立を要求するものとする。この委員会においては、労働者側の委員が50%以上を構成するものとし、それらの委員は当該工場の労働組合(存在する場合)によって、および労働組合が存在しない場合は労働者の間での民主的な選挙によって選出されるものとする。

苦情申し立てプロセス:

18 安全検査官は、締約企業に製品を供給している工場の労働者が安全検査官に対して、安全かつ秘密裏に、健康と安全に関する危険に関する懸念をすみやかに申し立てることができるよう保証する労働者苦情申し立てプロセスおよびメカニズムを確立するものとする。これはNAPの下で確立されるホットラインと連携するべきである。

透明性および報告:

19 SCはプログラムの重要な側面について、下記を含む情報を公開し、定期的に更新するものとする:

a. 締約企業がバングラデシュにおいて利用しているすべてのサプライヤー(下請業者を含む)の一覧リスト。これは締約企業によってSCに提供され、定期的に更新されるものとされているデータを基にしたもので、リスト上のどの工場が締約企業によって第1層および第2層の工場として区分されているかを示しているものとするが、但し、数量データおよび特定の企業と特定の工場を関連付ける情報の機密は保持される。

b. 検査報告書。これはこのプログラムの下で検査が実施されたすべての工場について、安全検査官によって作成され、本協定の第11項の規定に従って関係者および一般に公開されるものとする。

改善措置の実施のために速やかに行動していない工場に関する安全検査官による公式の報告。

c. 四半期ごとの集計レポート。これはこの業界の法令遵守関連データの集計と、検査が完了したすべての工場における検査結果、改善勧告、およびその時点での改善措置の進捗の詳細な検討を要約したものである。

20 本協定の署名者は、ILO等の団体、ハイレベル三者委員会、バングラデシュ政府と連携して、本協定に規定する検査および改善の活動に全面的に参加しているサプライヤーが本協定の透明性条項の結果として不利益を被ることがないことを保証するためのプロトコルの確立を促進するものとする。このようなプロトコルの目的は、(i)雇用主が労働者およびこの産業セクターの利益のために改善の努力を行うのを支援し、奨励すること、および(ii)サプライヤーが要求された改善措置の実施を拒否する場合の迅速な法的措置の促進を国内法と適合させることである。

サプライヤーのインセンティブ(動機付け):

21 各締約企業は、バングラデシュにおけるそのサプライヤが本協定で規定する検査、改善、健康と安全、および(該当する場合は)研修活動に全面的に参加することを要求するものとする。サプライヤーがそうしない場合、署名者は速やかに注意および警告のプロセスを開始し、それらの努力が成功しない場合は、それらのプロセスは取引関係の打ち切りにつながるものとする。

22 第1層および第2層の工場がこのプログラムにおける安全性の向上と改善の要求に従うことを奨励するために、このプログラムに参加するブランドおよび小売店は、それらのサプライヤーとの間で、工場が安全な職場を維持し、安全検査官によって指示された安全性の向上と改善の要求に従うことが資金的に実現可能であることを保証するような取引条件を交渉するものとする。各締約企業は、自らの裁量により、それらの工場が改善の要件に従うための資金的能力を持つことを保証するための代替的な手段を採用することができ、それには共同出資、融資の提供、ドナーまたは政府による支援の活用、ビジネス上のインセンチブの提供、改善費用の直接の支払いが含まれるがそれに限定されない。

23 本協定の締約企業は、この5年間のプログラムへの参加の確約によって証明されているように、バングラデシュとの間における長期的な調達関係を維持することを確約している。締約企業は、以下の条件の下で、第1層および第2層の工場との間で、少なくとも本協定の期間の最初の2年間、本協定の締結に先行する年と同等またはそれ以上の受注(発注)量の取引を継続するものとする:但し、(a)そのような取引が各企業にとって商業的に実現可能であること、および(b)工場が引き続き締約企業の契約条件に適合し、かつ、本協定の下での締約企業によるその工場に関する要求を満たしていること。

資金上の支援:

24 締約企業は、本協定に基づく義務に加えて、本協定に規定するSC、安全検査官、および研修コーディネーターの活動の資金に責任を負い、各企業は実施計画において決定される方式に従ってそれぞれの公正な分担分を拠出するものとする。SCは政府および他のドナーからの拠出を求める権限を付与されるものとする。各締約会社は、これらの活動のための資金を、本契約の期間の各年度において、各締約企業のバングラデシュにおける衣料品の年間生産量の、他の締約企業のそれぞれの年間生産量との相対的な比率に従って、但し年間50万ドルを上限として拠出するものとする。協定と計画の適切な実施のための十分な資金を確保しつつ、バングラデシュにおける歳入、年間生産量等の要因を基準とする最小拠出額のスライディング・スケールについて実施計画において決定し、毎年改定する。

25 SCは、拠出されたすべて資金の経理および監督のために、信頼できる、堅牢かつ透明な手続きが導入されていることを保証するものとする。